【尼崎市】認知症の親の家、今のうちに名義変更した方がいい?|ご相談事例

認知症の親の家の名義変更のご相談事例を解説した記事のイアキャッチ
石野 享
行政書士
兵庫県尼崎市の行政書士
尼崎、阪神地区を中心に相続・遺言、建設業許可などの許可申請、車庫証明などをサポート

「親が重度の認知症なのですが、亡くなる前に家の名義を自分に移しておいた方がいいでしょうか?」

先日、尼崎にお住まいの方からこのようなご相談がありました。ご相談者のお父さまは重度の認知症で、現在は成年後見人なども付いていない状態。家はお父さまの単独名義となっており、将来はご相談者ご自身がその家に住む予定とのことでした。

そこで、「認知症がさらに進んでしまったら、将来の相続手続きが大変になるのではないか」と考え、今のうちに自分の名義に変更しておいた方がいいのでは、と思われたそうです。

一見すると、「元気なうちに名義を変えておけば安心」と思ってしまいそうなケースです。しかし、すでに判断能力が大きく低下している場合には、そう簡単にはいきません。

今回は、司法書士にも相談したうえで、無理に今の段階で名義を移さず、「相続が発生した段階で名義変更をする」という方向で整理した事例をご紹介します。

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目次

「今のうちに不動産の名義を変えておきたい」というお気持ち

今回のご相談者は、お父さまが所有する家に将来ご自身が住む予定でした。そのため、「どうせ将来自分がこの家を引き継ぐのであれば、今のうちに名義を変えておいた方がいいのでは?」と考えたそうです。

特に心配されていたのが、お父さまの認知症がさらに進んだ場合のことでした。
今後、相続が発生したときに手続きが複雑になったり、家の名義変更がスムーズにできなくなったりするのではないか、、、。そう考えると、できることなら今のうちに整理しておきたいと思うのも自然なことだと思います。

ただ、ここで一つ注意しなければならないことがあります。

認知症の親から不動産を贈与してもらうことはできる?

親から子へ不動産の名義を移す方法の一つに「贈与(生前贈与)」があります。親子で贈与契約を結び、その後、不動産の名義を変更するという方法です。

しかし、贈与も法律上の契約です。
そのため、贈与をする本人に、その契約の意味や結果を理解して判断する能力(意思能力)があることが重要になります。

民法上、意思能力を有しない者がした法律行為は無効とされています。
そのため、「親が認知症だけど、子どもが書類を用意して名義を変えてしまえばいい」というわけにはいきません。後になって、「その時点で、本当に本人が自分の財産を子どもに贈与することを理解していたのか」という問題が生じる可能性があります。

特に今回のように、すでに重度の認知症となっている場合には、慎重に考える必要があります。

また、税務的にも相続に伴う名義変更の方が、贈与契約よりも有利ですが、より具体的な内容は専門の税理士さんにお譲りします。

成年後見制度を利用する方法もあるけれど…

では、認知症の親の不動産をどうしても管理・処分しなければならない場合はどうすればいいのでしょうか。
その方法の一つとして「成年後見制度」があります。これは、判断能力が十分でない方の財産や権利を守るための制度で、成年後見人が本人の財産を管理し、必要な法律行為などを行います。

ただし、注意が必要なのは、成年後見制度は「親の財産を子どもに移すための制度」ではないということです。あくまで本人の利益や権利を守るための制度です。

また、家庭裁判所への申立て手続きが必要になるほか、ケースによっては成年後見人等への報酬など、継続的な費用負担が発生することもあります。そのため、「子どもに家の名義を移したいから、成年後見人を付ければいい」という単純な話ではありません。

今回のケースでも、成年後見制度を利用する選択肢が全くないわけではありませんでしたが、「将来自分がその家を相続する予定なのに、あえて今すぐ名義を移す必要があるのか」という点を立ち止まって考える必要がありました。

司法書士にも相談し、「相続まで待つ」ことに

そこで、今回のケースについて連携している司法書士にも相談しました。

現在の状況を踏まえて検討した結果、「今の段階で無理に名義を移そうとせず、相続が発生した段階で名義変更をする」という方向で整理することになりました。

今回の推定相続人は、お父さまの子であるご相談者様とお兄さま、そしてお父さまの配偶者(お母さま)です。
実際に相続が発生した場合には、誰がどの財産を取得するのかを相続人の間で整理(遺産分割協議)し、ご相談者が家を取得するのであれば、その段階で名義変更の手続きを進めていくことになります。

今回の最大のポイントは、「今すぐ名義を変えなければならないわけではない」と整理できたことでした。

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「今できること」と「相続が始まってからすること」を分けて考える

今回のご相談で改めて感じたのは、相続の準備というと「今のうちに財産を子どもに移しておかなければ」と焦ってしまいがちだということです。

しかし、親御さんの判断能力がすでに低下している場合、法的にできることには限りがあります。だからといって、何も準備できないわけではありません。

例えば、以下のようなことは今のうちから進められます。

  • 親御さんが所有している不動産(権利証や固定資産税の通知書など)を確認しておく
  • 不動産の登記事項証明書を取得して現状を確認しておく
  • 相続人が誰になるのか(戸籍などをたどって)確認しておく
  • 預貯金などの財産を一覧に整理しておく
  • 将来、その不動産を誰が取得する予定なのか、あらかじめ家族間で話し合っておく
  • 相続が発生した場合に必要になる手続きの流れを確認しておく

「今、名義を変える」ことだけが相続対策ではありません。
むしろ現在の状況で無理に財産を動かすよりも、将来の相続発生時にスムーズに手続きを進められるよう、情報や意思を整理しておくことのほうが役立つ場合も多いのです。

関連記事:相続手続きの種類と期限

「何をすればいいのか分からない」段階でもご相談ください

今回のご相談は、「認知症が進む前に、何とか家の名義を自分に移しておきたい」という焦りや不安から始まりました。しかし、専門家と一緒に状況を整理してみると、「今すぐ名義を移さなくても、相続の段階で手続きをすれば大丈夫」ということが分かり、ご安心いただけました。

相続に向けた準備では、目の前の手続きをすることだけが大切なのではありません。

  • 「これは今やるべきことなのか?」
  • 「相続が発生してからでもいいことなのか?」
  • 「どの専門家に頼むべきことなのか?」

これらを整理することも、立派な相続準備の一つです。

本当は、もっと早い段階で「遺言書を残しておく」「家族信託を結んでおく」といった対策を取れれば、より良い選択肢もありました。ただ、そうした準備を事前にしておくのは、なかなか難しいことでもあります。

当事務所では、相続に関するご不安について、現在の状況を丁寧にお聞きしながら、必要な手続きや道のりを一緒に整理しています。不動産の相続登記など、行政書士が直接行えない手続きについては、信頼できる司法書士、税理士などの専門家と連携してワンストップで対応いたします。

「親が認知症になってしまったけれど、相続の準備はどうすればいい?」
「家の名義を今のうちに変えた方がいいのか分からない」

そんな、「まだ何も決まっていない段階」で構いません。
何か手続きを自己判断で始めてしまう前に、まずは現在の状況を整理するところから、どうぞお気軽にご相談ください。

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